薬は誰にでも必要?悪玉コレステロールの治療は「将来の心血管リスク」で決まる
- 2026年11月4日
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「悪玉コレステロールが高いですね。薬を飲みましょう。」??
健康診断でLDLコレステロールが高いと指摘されると、すぐに薬が必要だと思われる方もいるかもしれません。
しかし、脂質異常症の治療で大切なのは、LDLコレステロールの数値だけではありません。
スタチンによって心筋梗塞や脳梗塞を予防するメリットは、もともとの心血管リスクによって大きく変わります。
1. 同じLDLコレステロールの値でも、予防効果は人によって違う
お薬(スタチン)はLDLコレステロールを低下させ、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクを減らします。
研究では、LDLコレステロールを約39mg/dL(1mmol/L)低下させると、主要な血管イベントが相対的に約20〜25%減少することが示されています。
ここで重要なのが、相対リスク低下と絶対リスク低下の違いです。
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相対リスク低下:もともとのリスクに対して何%減少したか
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絶対リスク低下:実際に発症する人が何%減ったか
2. 同じ25%のリスク低下でも、実際のメリットは違う
例えば、お薬(スタチン)によって相対リスクが25%低下すると仮定します。
①年齢の影響で主にLDLコレステロールが上がる更年期以降の女性(高血圧なし、糖尿病もなく、健康的な生活習慣)
②LDLが高い上に、高血圧・糖尿病・喫煙など複数の危険因子を持つ男性(不健康な生活週間のイメージ)
を、仮に以下のようなリスクで比較してみます。
モデルケース:10年間の心血管イベント発症リスク
①更年期以降の女性(例)
治療前の発症リスク:5%
②危険因子の多い男性(例)
治療前の発症リスク:20%
お薬投与後(相対リスク25%低下と仮定)
10年間の心血管イベント発症率。仮想モデル

※治療前後の発症率を比較するための図です。相対リスク低下は両者とも25%です。
つまり、どちらも相対リスクは25%低下しますが、実際に予防できる人数は男性の方が4倍になります。
3. 更年期以降の女性も注意が必要
女性は閉経に伴ってエストロゲンが低下し、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。
しかし、LDLが上昇したからといって、全員にお薬が必要なわけではありません。
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他の心血管危険因子が少ない
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高血圧や糖尿病がない
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喫煙歴がない
こうした場合には、お薬のメリットはあまり大きくありません。(無い訳では無いです。)
まず食事・運動などの生活習慣改善を行い、全体的なリスクを評価することが重要です。
一方、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙、高血圧などを伴う場合は、積極的な脂質管理を検討します。
4. 大切なのはLDLの数値だけでなく、将来のリスク
脂質異常症の治療は、単にLDLコレステロールを下げることが目的ではありません。
将来の心筋梗塞や脳梗塞をどれだけ予防できるかが重要です。
同じLDLコレステロール160mg/dLでも、患者さんのリスクへの考え方、年齢、性別、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能などによって治療方針は変わります。
当院では、脂質の数値だけでなく、患者さん一人ひとりの心血管リスクを総合的に評価し、薬物療法の必要性を判断しています。
参考文献
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Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration. Lancet. 2012;380:581-590.
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日本動脈硬化学会編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.