予防接種
予防接種
予防接種には「定期接種」と「任意接種」の2種類があります。
定期接種は各自治体が実施する予防接種のことを言います。定期接種には肺炎球菌ワクチン(65歳以上、5歳刻みで1回まで)などが挙げられ、費用の助成があります。任意接種は個人の判断で受ける予防接種となり、自己負担となります。任意接種にはインフルエンザワクチン(高齢者は助成あり)、シングリックス、シルガード9などが挙げられます。
ファイザーとモデルナワクチンのmRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)が広く使用されています。重症化予防・感染予防の効果が証明されています。重篤な副作用のリスクは0ではありませんが、一過性の副作用がほとんどです。
基礎疾患がある方や65歳以上の高齢者の方は、ワクチンを受けるメリットが大きいと考えます。
以前と比べると、ワクチンを接種するメリットは相対的に下がってきています。健康な方や子供が重症化する可能性が比較的稀だからです。
それでも、ワクチンのわずかなデメリットに比べると有用性の方が勝ります。特に後遺症リスクの軽減には役に立つと思われますので、接種を検討しても良いでしょう。
不活化ワクチンはウィルスを無毒化した成分を用いています。ウィルス本来の病原性が無いため、免疫抑制剤などの治療中でも接種することができます。
インフルエンザワクチン、ニューモバックス(肺炎球菌ワクチン)、サーバリックス、ガーダシル、シルガード9(子宮頸がんワクチン)、シングリックス(帯状疱疹ワクチン)などは不活化ワクチンです。
一方、生ワクチンはウィルスを極度に弱毒化したものです。病原性は限りなく低いものの、理論上は感染のリスクがあるため免疫抑制剤などの治療を受けている方、妊娠中の方は接種することができません。
麻疹・風疹ワクチン、従来の水痘帯状疱疹ワクチン、おたふくかぜワクチンなどは生ワクチンです。
接種間隔について、異なる生ワクチンを接種する場合は27日以上空けて接種します。不活化ワクチンは同時接種が可能で接種間隔の制限はありません。また生ワクチンと不活化ワクチンの同時接種も可能です。
ワクチンは同時に何本でも接種可能(新型コロナワクチンは除く)です。
ただ、生ワクチン同士で間隔を空けて接種する場合は、27日以上の間隔を空けて接種する必要があります。
帯状疱疹ウィルスには大人になるまでにほとんどの人がかかっており、加齢などの要因で免疫が落ちてくると発症します。
こちらの写真のように、神経の走行にそって痛みが出て、皮膚に赤い水ぶくれができてきます。皮膚症状が治っても神経痛に悩まされることがあるので、予防にワクチンをお勧めします。
帯状疱疹ワクチンはシングリックスと生ワクチンの2種類のワクチンから選択します。
シングリックスは初回と2ヶ月後の2回1セットのワクチンです。帯状疱疹の予防効果は90%以上と非常に高いワクチンです。
シングリックス | ビケン生ワクチン | |
---|---|---|
接種回数 | 2回 | 1回 |
発症 予防効果 |
97% | 50% |
免疫の 持続性 |
9年以上 | 5年で減弱 |
ワクチン の価格 |
22,000円/1回 | 7,700円/1回 |
肺炎球菌は肺炎の原因となる細菌で最も頻度が高いものです。
肺炎の予防、また肺炎にかかった時の重症度を下げるためにもワクチンを有効活用しましょう。ニューモバックスとプレベナー13という2種類のワクチンがあります。ニューモバックスはカバーする肺炎球菌のタイプが広いですが、免疫力の持続力は弱く5年以上空けて2回以上の接種をすることも可能です。プレベナー13はカバーする肺炎球菌のタイプは少ないですが、「免疫力をあげる力が強い」という特徴があります。
両者を組み合わせて接種することで、より肺炎球菌への免疫を高めることができます。
ニューモバックスのみの接種でも効果があります。
ニューモバックス | プレベナー13 | |
---|---|---|
含まれる肺炎球菌型 | 23種類 | 13種類 |
免疫を 上げる力 |
比較的弱め | 強い |
免疫の 持続性 |
5年で減弱 | 長い |
再接種 | 5年以上 空けて |
原則なし |
公的助成 | あり (65歳から5歳刻みの年齢) |
なし |
⑴今までにニューモバックスを定期接種した方 | 初回のニューモバックス→(1年以上空けて)プレベナー13 |
---|---|
⑵今回初めて肺炎球菌の予防接種を検討される方 | プレベナー13→(6ヶ月〜4年後)ニューモバックス |
子供に多い感染症ですが、大人もかかることがあります。
全身の発疹と発熱、リンパ節の腫脹などです。
特に耳の後ろのリンパ節腫脹が特徴です。
妊娠早期に風疹にかかると、赤ちゃんに先天性風疹症候群という奇形を起こす可能性が高くなります。しっかりした免疫をつけるために、風疹ワクチンは2回の接種が必要です。
風疹ワクチンは2006年4月以降に2回の定期接種となっておりますが、2006年4月以前に生まれた方は1回、あるいは1度も接種していない可能性があります。母子手帳を確認して、1回接種している方は、4週以上空けてもう1回接種を受けて(抗体検査は不要)ください。風疹の接種歴が2回ある方に関しては、検査や接種は不要です。
予防接種歴が不明の方は抗体検査を受けて、必要な回数の接種を受けてください。
ワクチン接種を受ける場合、赤ちゃんへの影響を極力避けるためワクチン接種前1ヶ月から接種後2ヶ月の避妊が必要です。しかし、もし接種後に妊娠が判明したり避妊が失敗した場合でも、これまでに先天性風疹症候群は報告されていません。
他の生ワクチンにも共通して言えることですが、妊娠中にワクチンを接種することはできません。その場合は感染リスクになるような人混みに出かけない、配偶者や家族の方の抗体の確認やワクチン接種をして極力リスクを下げるようにしましょう。
空気感染で非常に感染力の強い病気です。
発熱、咳、鼻汁、咽頭痛といった風邪症状、その風邪症状が一旦落ち着くと発疹がみられます。時に脳炎や肺炎を起こす、重症化しうる感染症です。
風疹と違い、妊娠時にかかっても奇形のリスクは低いと考えられています。しかし、母体に影響が出ることにより流産や早産のリスクが高くなります。母子手帳を確認して、1回接種している方は、4週以上空けてもう1回接種を受けて(抗体検査は不要)ください。麻疹の接種歴が2回ある方に関しては、原則検査や接種は不要です。
予防接種歴が不明の方は抗体検査を受けて、必要な回数の接種を受けてください。
赤ちゃんへの影響を極力避けるためワクチン接種前1ヶ月から接種後2ヶ月の避妊が必要です。
大人であれば免疫を持っている人がほとんど(95-98%)ですので、妊娠中に水痘帯状疱疹ウィルスにかかる可能性はあまり高くないと言えます。一方で、免疫のない妊婦さんが初めてかかると水疱瘡になり、肺炎を起こし重症化することがあります。
また比較的まれですが奇形を引き起こしたり、生まれた赤ちゃんに水ぼうそうを発症させる可能性があります。小児では2014年10月から定期接種になっているワクチンです。2回のワクチン接種記録がなければ、妊娠前の抗体検査と必要があればワクチン接種をお勧めします。
感染すると、耳の下が腫れて痛み、熱や怠さがでます。比較的軽症で治ることがほとんどですが、稀に脳炎や髄膜炎を起こします。また、妊娠後期の感染で生まれた赤ちゃんに感染する可能性があります。小児で定期接種化されておらず、任意接種のワクチンです。
2回のワクチン接種記録がなければ、妊娠前の抗体検査と必要があればワクチン接種をお勧めします。
疾患・ ウイルス名 |
検査方法 | 単位 | 免疫抗体が 全くない状態 |
十分な免疫なし | 十分な免疫あり |
---|---|---|---|---|---|
麻しん (はしか) |
EIA法-IgG | EIA価 | 2.0未満 | 2.0-15.9 | 16.0以上 |
PA法 | 倍 | 16倍未満 | 16倍、32倍、 64倍、128倍 |
256倍以上 | |
NT法 | 倍 | 4倍未満 | 4倍 | 8倍以上 | |
風しん (ふうしん) |
HI法 | 倍 | 8倍未満 | 8倍、16倍 | 32倍以上 |
EIA法-IgG | EIA価 | 2.0未満 | 2.0-7.9 | 8.0以上 | |
水痘 (水ぼうそう) |
EIA法-IgG | EIA価 | 2.0未満 | 2.0-3.9 | 4.0以上 |
IAHA法 | 倍 | 2倍未満 | 2倍 | 4倍以上 | |
NT法 | 倍 | 2倍未満 | 2倍 | 4倍以上 | |
ムンプス (おたふくかぜ) |
EIA法-IgG | EIA価 | 2.0未満 | 2.0-3.9 | 4.0以上 |
B型肝炎 (HBs抗体) |
CLIA法 | mIU/mI | 10.0未満 | – | 10.0以上 |
子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルス(HPV)というウイルスの感染が原因で引き起こされる病気です。
HPVは性行為により感染します。男性・女性を問わず、多くの人が一生のうちに一度は感染するごくありふれたウィルスです。HPVワクチンでこれらの感染をかなり防ぐことができます。
定期接種で使用できるワクチンは
①サーバリックス
②ガーダシル
③シルガード9
の3種類のワクチンです。従来は定期接種(対象は小学校6年〜高校1年の女性)にはサーバリックスとガーダシルのみが使用できましたが、2023年4月からはシルガード9が定期接種に入りました。
シルガード9は子宮頸がんの原因ウィルスの約90%(ガーダシルのHPV6/11/16/18型に加え、HPV31/33/45/52/58型)をカバーしており、今後は可能な限りシルガード9の接種が推奨されます。平成9年度~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)でHPVワクチンの定期接種の対象年齢の間に接種を逃した方も公費で接種できます。
シルガード9は14歳以下は2回接種、15歳以上は3回接種です。2回接種のスケジュールは初回接種し、6ヶ月後(少なくとも5ヶ月は空けて)に2回目です。3回接種のスケジュールは初回接種し、2ヶ月後(少なくとも1ヶ月は空けて)に2回目、2回目から4ヶ月後(少なくとも3ヶ月空けて)に3回目です。腕または大腿部(ふともも)の筋肉内に接種します。
副反応に関しては、国内外の報告や当院での接種経験から、とても安全性の高いワクチンと考えられます。一時積極的推奨が差し控えられていましたが、安心して接種を受けてください。
ワクチンはとても有効ですが、完璧ではありません。病変を早期発見し早期治療するために、ワクチン接種の有無に関わらず子宮頸がん検診の受診が必要です。
20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
インフルエンザ | 適宜お知らせに記載します |
---|---|
ニューモバックス | 7,700円 |
プレベナー13 | 12,100円 |
水痘帯状疱疹ワクチン(生ワクチン) | 7,700円 |
シングリックス(不活化帯状疱疹ワクチン) | 22,000円 |
MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン) | 9,350円 |
ムンプスワクチン | 5,500円 |
ガーダシル(子宮頸がんワクチン) | 17,600円 |
シルガード9(子宮頸がんワクチン) | 27,500円 |
B型肝炎ワクチン | 4,950円 |
(税込)
下記にあてはまる方はワクチンを接種できません。該当すると思われる場合、必ず接種前の診察時に医師へ伝えてください。
下記にあてはまる方はワクチンの接種について、注意が必要です。該当すると思われる場合は、必ず接種前の診察時に医師へ伝えてください。
妊娠中、又は妊娠している可能性がある方、授乳されている方は、接種前の診察時に必ず医師へ伝えてください。