インフルエンザの治療と予防
インフルエンザの治療と予防
発熱、頭痛、咳、咽頭痛、鼻汁、下痢、腹痛などがあります。発熱は高熱のことが多いですが、37度前後でもインフルエンザということもあります。高齢者や小児では重症化するリスクがあり、ワクチン接種による予防、早期治療が有効です。人から人へ移るには1~3日かかります。家族がインフルエンザになって、どうしてもかかりたくない場合は抗インフルエンザ薬の予防内服が有効です。
主に当院で処方するのは以下の3つのお薬です。
薬剤名 | 治療 | 有効性 | 予防 |
タミフル | 1日2回、1回75mgカプセル(大人)を5日間内服 | ◯ | 1日1回を10日間 |
イナビル |
10歳以上:2キット吸入 10歳未満:1キット吸入 |
◯ |
10歳以上:2キット吸入 10歳未満:1キット吸入 |
ゾフルーザ | 1回内服 | ◯(12歳未満で耐性化のリスクあり) | 1回内服 |
・タミフルは歴史も長く、安全性・有効性が最も信頼できるお薬です。
・イナビルは吸入で1回で治療が完結するのがメリットです。
・ゾフルーザは最も新しいお薬で1回投与ですが、小さいお子様では耐性ウィルスの懸念があります。
家族や身の回りの人がインフルエンザに罹患している場合、どうしても発症したくないときは予防投与が有効です。
☆予防内服のポイント
ただし、根拠となるデータが少ないのが現状です。
インフルエンザ脳症を発症した方がジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸という成分を含んだ薬剤を使用していたとし、これらの成分がインフルエンザ脳症の発症、重症化に関与しているという見解。1999年、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告より
・動物の研究では解熱剤(カロナール、アスピリン、ボルタレン)の使用で、インフルエンザ死亡リスクが上昇した。人間での質の高いデータはない。(Journal of the Royal Society of Medicine、Volume103,Issue10 https://doi.org/10.1258/jrsm.2010.090441)
1980年代にライ症候群のケースが増加した後、研究によりインフルエンザや水痘感染中にアスピリンを使用した子供たちの間でライ症候群が発生するリスクが高まることが示された。
お子さんは免疫や脳が発達途上のため、インフルエンザの重症化リスクです。
ワクチンと早めの治療が有効です。
小児における発症予防効果は25-60%。(新庄正宜 “施設における感染制御”「医学と薬学」 74(3): 269-275, 2017.)
☆小児においてもワクチンと治療薬は有効です。
妊娠すると薬やワクチンが安全に接種できるか心配になるかも知れません。
インフルエンザに対しては薬やワクチンは安全に使用できると考えられています。
妊娠中の季節性インフルエンザワクチン接種により、母体および新生児のインフルエンザ感染を減らすことが可能です。カナダでのデータベースコホート研究では、妊娠中の母体インフルエンザワクチン接種は、幼児期の健康への影響は認められませんでした。日本感染症学会HPより抜粋
妊娠中いずれかの時期にオセルタミビル(タミフル)に曝露した619例の妊娠例で、早産率、低出生体重児の出産率などについて一般人口の発生率と差はみられませんでした(Am J Obstet Gynecol 2013;209:130.e1-9)。
リレンザ・イナビルは吸入薬です。リレンザ®に関しては妊娠初期に使用したお母さんの赤ちゃんに先天異常発生率の増加はみられなかったという報告が1つあります。イナビル®については妊娠初期の使用に関する報告はありませんが、いずれも吸入薬であり、お母さんの血液中に検出される薬の量はごくわずかですので、妊娠中の使用は問題になりません。(生育医療センターのHPより)
☆妊娠中だからこそ、ワクチンと早めの治療が有効です。