あがり症
あがり症
あがり症は社交不安障害とも呼ばれます。他人からの評価を過度に意識するあまり、さまざまな社会的な場面で苦痛を感じます。
具体的には・・・
こんな場面で症状が出てきます。症状とはなんでしょう?
こんな症状が組み合わせて出てきます。症状はかなり不快なため、その場面を回避しようとしたり、過度に準備をしたり、かなり前からその事で頭がいっぱいになったりすることがよくあります。
あがり症の人には、他人があまり悩んでないようにも見えます。
しかし、多くの人が人前を苦手にしていることがわかっています。
社交不安障害は14%~48%と報告されている。人前で話すことの不安に関して、女性の方が男性よりも多かった。(27% vs 14%)。adrienne B et al. Journal of Voice Volume 24, Issue 3, May 2010, Pages 302-307
あがり症の人は、他人がどうなのかがよく気になります。
あまり緊張してなさそうな人、自分よりもっと緊張してそうな人、も過剰に意識してしまいます。
実際は、症状の内容や程度は人それぞれです。人と比較すること自体にはあまり意味がありません。
自分の中でクリアすれば良い問題なのです。
世の中にはあがり症で困っている人が多いと見えて、様々な解決方法が提案されます。
曰く・・・
しかし・・・それらの準備、心構えも、本番の圧倒的な緊張感の前で崩れることがしばしば。
どうすれば高確率で症状を抑えられのでしょうか?
あなたの症状は1対1の会話でも出るでしょうか?5人だったら?100人だったらどうでしょう?
よく知った人なら大丈夫でしょうか?それとも逆にプレッシャーを感じるでしょうか?
どの場面を苦手とするかは人それぞれです。ただしそこには、必ず他人からの評価(他人が本当にそう思っているかは別として)が存在するはずです。
あがり症の時に体に何が起こっているのでしょうか?
交感神経の作用から考えると分かりやすいです。
交感神経は自律神経です。自律神経にはもう1つ、副交感神経があります。
交感神経と副交感神経は、表裏一体。コインの表裏の関係です。
自律というだけあって、自分の意思とは関係なく勝手に働いてきます。
基本的に、深呼吸くらいではコントロールできないと思ってください。
上記を踏まえた上で、あがり症のサイクルはズバリこれです。
上のサイクルの中で最も大切なのは、3,4の体の症状が出始めて、自分でそれを自覚し始めるところです。
これが始まってしまうと、自動的に症状悪化のサイクルが回り始めてしまうのです。
交感神経は危機的状況に対処するための神経です。
ライオンが目の前に来て、リラックスしてたら食べられます。
ライオンが来たら、交感神経がガンガン働くべきです。発表内容を考えている場合ではありません。
人間はそんな環境(突然ライオン的な)で長らく進化してきたので、そのスペックは現代になっても変わりません。
問題は、プレゼンの場面でライオンがきた時の神経が活発化することです。
プレゼンの場面では(通常は)ライオンはいません。(笑)
プレゼンの場からいきなり逃走はできません。
何が言いたいかというと・・・
ということです。このずれが強いほど、重度のあがり症ということです。
治療のコンセプトはこのずれを、薬で少しチューニングするというだけの話です。
あがり症はトラウマ体験が原因とも考えられます。
しかし、同じ体験でも平気な人もいます。
感受性には個人差があります。これはある程度生まれつきのもの要素もあります。
指導的立場になる、会社で昇進する。失敗できない仕事を任せられる。
こういった、プレッシャーのかかる場面はきっかけに過ぎません。
もともと、苦手な傾向はもっていたのです。
もちろんトラウマ体験を繰り返すことは、苦手意識を固定化させるのでよくありません。
つまり、根本的にすっかり完治する。といった類のものではない、と受け止めた方が良いと考えています。
いよいよ最も大切なところまで来ました。
まず、前項でも触れた、あがり症のサイクルを振り返ってみましょう。
3,4の交感神経による症状が出る→自分で自覚して焦る、が大切だったのですね。
実際の治療に関しては、上のサイクルのどこに効かせるか?で治療を考えます。
☆1に効かせる→抗不安薬(場面毎に内服、エチゾラムやアルプラゾラムなど)
SSRI(長期的に内服して、不安の感受性を下げる薬)、認知行動療法
☆3,4に効かせる→交感神経を抑える薬(別名βブロッカー:インデラル、アロチノロールなど)
理論的には頭の不安を抑えれば良さそうですが、実際は交感神経を抑える薬が最も有効です。
ドキドキや震え、息苦しさが出なければ、自分の症状を意識して焦ることがなくなります。
そうすると、自分のやるべきこと(話す内容や動きなど)に意識が向けられます。
経験的にはこの治療法は、ほとんどの人に非常に効果があります。
SSRI(セルトラリン、エスシタロプラムなど) | βブロッカー(インデラルなど) | 抗不安薬(アルプラゾラムなど) | |
目的 | 長期的に不安を軽減 | 場面毎で使用 | 場面毎で使用 |
効果 | ◯(長期的には) | ◎ | △(単独では効果乏しい) |
持続時間 | −(その場では効果ない) | 4時間〜6時間 | 4時間〜6時間 |
保険適応 | ◯(不安障害) | × | ◯(不安神経症) |
※基本的にβブロッカーを使用するため、自費診療になります。
毎日症状で苦しんでいる人はSSRIの内服を検討してください。
月に数回の頻度であれば、インデラル+(アルプラゾラムなど)を使います。
あがり症は持って生まれた傾向もあるため、根治は難しいです。
というよりも「治す」というものではないと思っています。
人間としてのスペックと、現代人が生きている環境(社会的・ビジネス的なプレゼンとか、PTAとか)との不一致です。
少し調整してあげれば、症状は劇的に軽くなります。あまり悩む必要はありません。
この記事が皆様の役に立てば幸いです。