骨粗しょう症
骨粗しょう症
骨粗鬆症は、骨の強度が低下して、ちょっとした転倒や日常生活の動作でも骨折しやすくなる病気です。

特に女性では、閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、骨量が急速に減少しやすくなります。
日本人女性では、年齢とともに骨粗鬆症の割合が大きく増加します。
ある日本人の大規模調査では、女性の骨粗鬆症の割合は、
| 年齢 | 骨粗鬆症の割合 |
|---|---|
| 50歳代 | 約17% |
| 60歳代 | 約44% |
| 70歳代 | 約57% |
| 80歳以上 | 約57% |
と報告されています。
つまり、60歳代では女性のおよそ2人に1人、70歳以上では半数以上が骨粗鬆症に該当する可能性があります。
「痛くないから大丈夫」と思っていても、骨密度が低下していることがあります。
骨粗鬆症の怖いところは、骨折するまで症状がほとんどないことです。
骨粗鬆症になると、特に以下の骨折に注意が必要です。
椎体圧迫骨折
大腿骨近位部骨折
橈骨遠位端骨折
上腕骨近位部骨折
中でも、椎体骨折と大腿骨近位部骨折は、その後の生活の質や要介護状態にも大きく影響する重要な骨折です。
また、背骨の骨折は「転んだ」「重いものを持った」などの明らかなきっかけがなくても起こることがあります。
「最近、身長が縮んだ」
「背中が丸くなってきた」
「腰や背中が痛い」
という場合には、知らないうちに椎体骨折を起こしている可能性があります。
骨粗鬆症の診断では、DXA(デキサ)法による骨密度測定が標準的な検査方法です。
特に、
腰椎
と
大腿骨近位部
の骨密度を測定することが重要です。
DXAは、2種類のX線を利用して骨密度を測定する検査で、短時間で正確に骨密度を評価できます。

骨粗鬆症では、体の部位によって骨密度の低下の程度が異なることがあります。
そのため、手首など1か所だけを測定するのではなく、
腰椎+大腿骨近位部
を測定することが診断・治療方針の決定に重要です。
ただし、骨粗鬆症の診断は骨密度だけで決まるわけではありません。
脆弱性骨折の有無、骨密度、年齢、その他の危険因子などを総合的に評価します。
DXAでは、若い成人の平均骨密度を100%とした「YAM(Young Adult Mean)」という指標を使用します。
原発性骨粗鬆症では、脆弱性骨折がない場合、
YAM 70%以下
または
Tスコア −2.5 SD以下
が骨粗鬆症の診断基準となります。
また、椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折がある場合には、骨密度の値にかかわらず骨粗鬆症と診断される場合があります。
そのため、
「骨密度が何%だったか」
だけを見るのではなく、
骨折歴+骨密度+年齢+その他の危険因子
を合わせて判断することが重要です。
骨粗鬆症治療の最も重要な目的は、
骨折を防ぐこと
です。
治療は、
を組み合わせて行います。
2025年版のガイドラインでは、ビスホスホネート、デノスマブ、SERM、テリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブなど、さまざまな治療薬が整理されています。

DXAによる骨密度に加えて、
・過去の骨折
・年齢
・家族歴
・ステロイド使用
・喫煙
・飲酒
・低体重
・その他の病気や薬剤
などを確認します。
↓
カルシウム、ビタミンD、タンパク質などを十分に摂取し、運動習慣をつけます。
喫煙や過度の飲酒も骨折リスクを高めるため、できるだけ避けます。
↓
STEP 3
骨密度が低い場合や、骨折歴などから骨折リスクが高い場合には、薬物治療を開始します。
↓
比較的骨折リスクが低い場合には、ビスホスホネート、SERM、デノスマブなどが代表的な選択肢となります。
一方、骨折リスクが非常に高い場合には、骨形成促進薬であるテリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブなどを検討することがあります。
↓
骨密度、骨折の有無、副作用、腎機能などを確認しながら、治療を継続・変更します。
骨粗鬆症治療では、薬を開始して終わりではなく、長期的に治療を管理することが重要です。
| 薬剤の種類 | 主な薬剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| ビスホスホネート | アレンドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸、ゾレドロン酸など | 骨吸収を抑えて骨量を維持する。長年使用されている代表的な治療薬 |
| SERM | ラロキシフェン、バゼドキシフェン | 女性ホルモンに似た作用により骨吸収を抑える |
| 抗RANKL抗体 | デノスマブ | 強力に骨吸収を抑える。6か月に1回の注射 |
| 活性型ビタミンD3製剤 | エルデカルシトールなど | カルシウム代謝を調整し、骨の状態を改善する |
| 骨形成促進薬 | テリパラチド、アバロパラチド | 骨を作る働きを促進する。骨折リスクが非常に高い場合に検討 |
| 抗スクレロスチン抗体 | ロモソズマブ | 骨形成を促進すると同時に骨吸収を抑える。高リスク患者で使用 |
2025年版ガイドラインでは、ゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブなども含めて治療薬の位置づけが整理されています。
骨は、適度な刺激が加わることで維持されます。
まず取り組みやすいのがウォーキングです。
無理のない範囲で、
「毎日少しでも歩く」
ことを習慣にしましょう。
ウォーキングなどの荷重運動は、骨密度の維持だけでなく、筋力や身体機能の維持にも役立ちます。
特に、
・スクワット
・椅子からの立ち上がり
・かかと上げ
・軽い階段昇降
などがおすすめです。
筋力を維持することは、骨への刺激だけでなく、転倒を防ぐことにもつながります。
骨粗鬆症の運動療法では、骨密度を上げることだけでなく、転倒を防ぎ、移動機能を維持することも重要な目的です。
転倒そのものを防ぐことが、骨折予防には非常に重要です。
壁や机につかまりながら、
片足立ち 30秒程度 × 左右
などから始めます。
ふらつく場合は必ず支えを使い、安全を優先してください。
骨粗鬆症では、背中が丸くなることで転倒や脊椎への負担が増えることがあります。
日常生活でも、
・背筋を伸ばす
・長時間の前かがみを避ける
・正しい姿勢を意識する
ことを心がけましょう。
すでに椎体骨折がある方や骨密度が非常に低い方では、自己流の激しい運動は避けてください。
特に、強い前屈やひねり運動、無理な重量挙げは脊椎への負担になることがあります。
骨折リスクが高い方は、医師や理学療法士に適切な運動方法を確認してください。
骨の健康には、
カルシウム
ビタミンD
ビタミンK
タンパク質
など、さまざまな栄養素が必要です。
極端な食事制限や過度なダイエットは、骨量低下につながることがあります。
目安として、
700~800mg/日
を意識します。
おすすめの食品:
・牛乳
・ヨーグルト
・チーズ
・豆腐
・小魚
・小松菜
・納豆
など。
カルシウムの吸収を助けます。
おすすめの食品:
・鮭
・サバ
・イワシ
・きのこ類
・卵黄
など。
日光を浴びることでも体内でビタミンDが作られます。
骨の形成や骨質の維持に関係します。
・納豆
・小松菜
・ほうれん草
・キャベツ
などに多く含まれます。
筋肉を維持することは、転倒予防にも重要です。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく摂りましょう。
以下にも注意しましょう。
・極端なダイエット
・運動不足
・喫煙
・過度の飲酒
・食塩の摂りすぎ
・日光不足
・カルシウムやビタミンDの不足
厚生労働省も、カルシウムだけでなく、ビタミンDやビタミンKを含むバランスのよい食事と、適切な運動を骨粗鬆症予防の基本として紹介しています。
骨粗鬆症は、骨折するまで症状がないことが多い病気です。
特に、
・閉経後の女性
・60歳以上の女性
・身長が縮んできた
・背中が丸くなってきた
・過去に骨折したことがある
・ご家族に大腿骨近位部骨折をした方がいる
・ステロイドを使用している
・体重が少ない
という方は、一度骨密度を調べることをおすすめします。
骨粗鬆症は、早期に発見して適切に治療することで、将来の骨折を予防できる可能性があります。
骨折してから治療するのではなく、骨折する前から骨を守る。
それが骨粗鬆症治療の大切な考え方です。